それは、夜。
消防車のサイレンの音が聞こえました。
どうやら星ヶ丘の、とある一軒の家にて、ボヤ騒ぎがあったようです。
稼動したスプリンクラーと置いてあった消火器のお陰で、消防隊到着の前に火は何とか消し止められた事もあり、幸いにして怪我人もなく、その家に住む若干お年を召したご夫婦は二人とも無事でした。
しかし、消防隊と警察が事情を聞くも、妻の証言はいまいち的を射ません。
ボヤ発生後の、ほぼ一部始終を見ていたと思われていた妻の証言が、どうにも空想じみているのです。
「ああ、まだ足が震えますわ……!!
夜に、夫と2階で一緒に眠っていたところ、1階から、まるで何かが爆発したような大きな物音がして、慌てて飛び起きましたの。
確認しに1階に下りましたら、その先にある居間のスプリンクラーが起動していて、辺りは水浸しになっていて……
そこには、同じ室内とは言え、離れた所にある押入れの引き戸が、まるで弾け飛んだように外れた状態で、炎に焼かれたかのように居間の中央にに転がっていましたの!
何があったのか分からず、驚いて二人で呆然としておりましたら、今度は玄関から爆発音が聞こえてきて……!
ああ、今でも思い出しますわっ! 急ぎそちらに向かうと、信じられない事に玄関のドアが吹き飛んで、外で燃えているじゃありませんか!
それに、確かに見ましたの……!
夫に信じてもらえませんでしたけれども……夫が飛び出して消火器でドアの火を消している時、そのドアの向こう、家の敷居の近くに見えた人影は、
昔、娘に買い与えた、家にあった人形にとても良く似ていたんです! それが、確かに歩いて旧市街の方に……! 実際に家の人形は無くなっていて──本当ですわ、信じて下さい!」
そう証言する妻の言葉は、
混乱し、取り乱した末の言葉として。
『1件目の』ボヤ騒ぎの、調書の備考に小さく載せられました。
そして、夜。
また、消防車のサイレンの音が聞こえます──
はじめまして、こんにちは。この度MSを勤めさせて頂きます冬眠と申します。
これは当シリーズの「 <宝石人形>蛍石フローティア」の同シリーズとなりますが、読まなくとも十分ご参加可能です。
まずは、何があったのか。状況から詳しくご説明させて頂きます。
【状況/PL情報(PC様が知る為には簡単な情報収集が必要となります)】
○ボヤ騒ぎのあった家、家族構成
・お金持ちの妙寺(みょうじ)家、星ヶ丘(D-10)
・父「辰巳」、母「加奈」、娘「美奈」の3名(それぞれの人物については後述)
・美奈は現在1人暮らしで、旧市街(K-5)在住
○人形について、家族から聞いた情報
・非常に高価なルビーを埋め込まれて作成された人形である
・その名を「ルヴィア」という
・当時8歳の美奈(みな)へのプレゼントとして親が購入
・美奈が幼い頃は、美奈がルヴィアを抱きしめ、毎日一緒にいた
・美奈が1人暮らしを始めた時(二十歳)、ルヴィアは押し入れの中で埃まみれになっていた
・ルヴィアは美奈の部屋には連れて行かれず、この家の押し入れの中に置かれたままだった
○妙寺家で燃えていたもの
・押し入れの戸、玄関のドア、家の入り口の門、の順番に燃えていた
・その他ガイド本文に記載されている、夫婦が目撃した情報
○不審火情報
・ここ数日、寝子島で何件かの不審火が報告されている
・不審火のあった場所を整理すると、少しずつ旧市街に近づいている
(このまま旧市街に向かえば、木造住宅が多い為に不審火は大惨事になる恐れあり)
・最新の不審火のあった場所は、I-9付近
・不審火のあった場所では、花火のように火の粉がゆっくり舞い落ちる様子が目撃されている
・それが地面の物に触れて燃えたと言う人がいるが、真偽は定かではない
○ボヤ騒ぎを経て、家から無くなっていたもの
・人形のルヴィア
・スタンドに入った、小さい頃の美奈の写真
【状況2/PC情報】
初期段階でPC様が把握出来る情報は、以下2点
・寝子島で、夜に何件かの不審火が発生している
・夜な夜な、ゴスロリの服を着た火を出すお化けが徘徊しているらしい(噂や都市伝説のレベル)
※このままでも行動は行えますが、『明確な犯人が分からない』『動機が予想もつかない』
『発火原因が分からない』等の理由により、全ての行動がルヴィアより後手に回る可能性がございます。
※今回におきましては、相談無しでは心地が良いエンディングへとは行き難い難易度となっております。
情報や相談、己の行動内容等は、共有しておいて損はありません。コメントページ等も是非ご利用下さい。
【この事態はいつ終わるの?】
終了条件は『ルヴィアを破壊する』『ルヴィアが満足する』『埋め込まれている宝石を壊す』のいずれか
※長い年月が過ぎ、製作者以外における関係者の殆どは、
人形の事も、左腕についている最高級クオリティのルビーの事も殆ど忘れてしまいました。
服も髪もボロボロで、人形単体としての価値はありません。
(ルヴィアを所持していた妙寺家は皆、宝石を単なる高級ガラスだと思い込んでいたようです)
【NPCについて】
○ルヴィア
・左二の腕に神魂が宿ってしまったビスクドール
※体の一部に宝石を当て嵌められた、とある製作者の手による<宝石人形>の一体
この<宝石人形は>全てで何種作られているかは不明
・左腕には大きく菱形にカットされた、美しいルビーが埋め込まれている
・身長は70cm強
・赤黒の色彩と、半袖デザインのゴシックロリータの衣装に身を包んでいる
・宝石は丸見え
・足に負担が掛かる為か、走るのを避ける傾向がある
・『期待や心の頼りを失くした場合』もしくは『対面相手を敵対者もしくは邪魔者とみなした場合』、
容赦なく攻撃を仕掛けてくる
・引き戸と玄関を破った爆炎は、普通に食らえばただでは済まないが、
何かしら回避やダメージ緩衝対策を取っていれば、ダメージはかなり緩和される
※その場凌ぎだけでも、対策のあるなしではダメージが全く違います。
(完全回避は、最初に回避アクションと併せてのダイス判定を行います。
そちらで避けられなかった場合に、被弾した事を前提に改めてダイス判定を行います)
※上記に伴い、今回のシナリオでは当シナリオ限定で重軽傷者が出る可能性があります。
[使用能力]
○爆炎:シナリオガイド冒頭で、押入れの引き戸と玄関すら弾き飛ばした、
ルヴィアの身長の倍はあろうかという大きさの衝撃波を交えた炎を打ち出す
○炎弾:自分と同じ位の大きさの炎を打ち出す
炎は途中から破裂して威力は小さくなるが、相手を攻撃する
○妙寺 辰巳
幼い頃の娘に、今回の原因の人形を買い与えた、星ヶ丘に住む父親(ひと)
ボヤ騒ぎの時は、吹き飛ばされた玄関ドアの消火にあたっていた
その為、人形の存在については見ていない
○妙寺 加奈
ボヤ騒ぎで混乱しており、まともな情報を得るのは難しい状態
ただ、しきりに「自分の家にあった人形が、歩き出していくのを確かに見た」と叫んでいた
彼女が混乱して流した情報の一部が、ネット上で一人歩きしている
○妙寺 美奈
一般の社会人、現在35歳(ひと)。旧市街(K-5)在住
ルヴィアに対しては、最初のうちの『大好き!』という感情だったが、
いつのまにか『人形が消えたけど、どこ行ったかなぁ』という程度の感情へと変化
(たまに実家に戻っても、捜す気は無い程度)
現在も、火事の噂は聞いているが、まさか自分の人形が動き出したとは想像もつかない様子
※オカルトや超常現象には無縁であり、何となく嫌悪感すら覚えている
○製作者
宝石人形シリーズを含むドールの販売・製作者(無自覚もれいび)
ムキムキで良い体格をしている。ドールを我が子のように可愛がっている
無意識ながらに、過去にルヴィアを売った事を後悔している
『ろっこん能力:自分の作った人形の心が何となく分かる』
【注意事項】
※今回は、アクション結果によっては、非常に後味の良くない結末が普通に起こりえます。
苦手な方はご注意下さい。
※競合するアクションが発生した場合には、内容の吟味と併せまして、ダイスによるマスタリングを行います。
そのマスタリング結果によって、競合した方どちらかの行動が反映されますが、
成功失敗問わず、その結果がエンディングにて良い方向へ向かうとは限りません。
今回はアクション競合時にダイス判定を取り入れます事から、
今までの当方のシナリオの中では1,2を争う難易度となるかと思われます。
宜しくお願い致します。
それでは、次はリアクションでお会いできます事を願いまして……